「コミュニティゲノム予防医学の展開」

ヒトゲノムの解読も最終段階に近い2000年4月の本専攻開学と同時に環境衛生学分野も立ち上がった。ゲノム情報を用いた予防医学への期待を予想し、我々は、遺伝的感受性要因を活用したコミュニティベースのhigh risk groupにおける予防の確立を目指してきた。疾患としては、小児希少遺伝性疾患とくも膜下出血について実践・研究してきた。

日本人は遺伝的に均一と考えられているが、地域により小児希少疾患の種類と発生頻度は大きく異なる。我々はリジン尿性蛋白不耐症(LPI)と Hartnup病について検討してきた。
 LPIは、塩基性アミノ酸の代謝異常であるが、離乳期に発見し早期にシトルリンを投与することで突然死を予防し、発達障害を防ぎQOLを著しく改善する。本疾患は世界的に稀であるが東北地方のある地域では高頻度に見出される。我々はこの地域にSLC7A7の創始者変異を見出し、行政、地域医師会の協力を得て約4年間にわたり7000名の新生児を、マススクリーニングした。その結果、2名の患者を発見することができた。
 Hartnup病は、中性アミノ酸の代謝異常と想定されてきたが、多様な症状をとることから多要因遺伝子病と考えられてきた。我々は、本疾患が5番染色体短腕に存在するSLC6A19が原因遺伝子であることを証明した。その結果、発症には、低栄養状態と遺伝子異常の2つが重要であることを証明した。

くも膜下出血は、職域コミュニティにおいては、過労死の原因として注目されている。くも膜下出血の90%は脳動脈瘤が原因であり、本学脳神経外科教室と共同で脳動脈瘤多発家系の協力を得て連鎖解析を行った。その結果、17番染色体、19番染色体、X染色体に候補遺伝子の存在領域を見出した。現在さらにゲノム疫学分野と共同で候補遺伝子を求めて研究中である。

今後もさらにコミュニティの視点でゲノム予防医学の展開を行いたい。
Hartnup病家系と中性アミノ酸トランスポーターSLC6A19

(平成16年12月15日 社会健康医学系専攻5周年記念シンポジウム)


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